「婚礼衣装を知ると、平和になる」

何の事?と思いますか?

私が言う「知る」とは、衣裳に描かれた“文様”を知るということ。
ここでは文様について少しお話しします。

文様を知ると、花嫁衣裳を纏う際に一層幸せな気分になりますので、。
ご興味がありましたら読んでみてくださいね。

 

文様のおはなし

模様ともいうが,通常,装飾史において様式化されたモティーフの単位を学問的対象としてみる場合には〈文様〉の語が使われる。一方,工芸品に繰り返される意匠の場合は,〈模様〉と呼ばれるのが一般的である。文様による装飾は人間のなかば本能的なもので,各地各民族の間で古くから建築,工芸,服飾等多方面に用いられている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて

文様とは人間の本能から生まれた装飾の事。
誰かを想ったり、未来を願ったり、自分を勇気づけるなど、力強く生きていくために描かれたものです。

そして文様は自然界が描かれていることも多いのです。
梅や桜、雲や水、鶴や孔雀など、特に婚礼衣装にはそのような文様が所狭しと描かれています。

それは、自然の持つ力を借りて幸せになってもらうため。
花嫁衣裳を仕立てる際に、家を離れるわが子には何とか幸せになってほしいと願う気持ちを文様に託してしつらえるのです。なので花嫁に着物には未来への希望が詰まっています。

人は非力ですから、偉大で絶対的な自然から力をもらい、わが子の幸せを精一杯願う、愛にあふれた気持ちを纏うことはこの上ない幸せです。

「婚礼衣装を知ると、平和になる」
愛されていること、幸せを願うこと、そして非力な自分の力になってくれるありがたさを感じられること、
やさしさに包まれると怒りは減り、感謝が増えるような伸びやかな気持ちになれることでしょう。

 

以下には、文様のごく一部ですが、私の手描きイラストと共に私なりの解釈も踏まえてご紹介させていただいています。ご自分の衣装にこの文様を見つけられましたら、ぜひ目を通してみてくださいね。

 

桜文様-sakura-

[繁栄・始まり・五穀豊穣]

桜は南から暖気がやってくると一斉に咲き、春が来た事を知らせてくれます。さくらの’さ’は五月の事、’くら’は座の意味で、神様の宿り木を意味します。

5月の神様は稲の神様と呼ばれ、その神様が降りたつ木が桜。桜の木の下で宴を設ける花見は神迎えの行事で、豊作を願いご機嫌取りしたのでしょう。

穀物が豊かに実ることへの祈り、そして豊作によってこの先も生きていける感謝からできた文様なんです。

椿文様-tsubaki-

[災難厄除・無病息災]

縄文時代には既に自生していたそう。木に春と書いて椿。雪の中でも咲く力強い花を見て、春を心待ちにする気持ちから名付けられました。

縄文時代は自然崇拝(アニミズム)という原始の信仰で、椿は”最強の結界樹”とされ、結界を張り、家を守り、人を守ってくれる存在でした。
それは椿の種の油にはある抗酸化力や、葉を焼いた灰は強い殺菌力があることから、災いから守ってくれるものとして重宝されていることからも分かります。

菊文様-kiku-

[無病息災・延命長寿]

菊には強い抗菌効果や各種薬効があり、古来中国では重宝されてきました。昔は麻疹やコレラなどの伝染病が集団発生することも多く、現在の様に原因も分かりませんでした。そのため神秘的な病とか、悪霊が取り憑いたとされ、節句や行事では、菊酒などの薬酒を飲み予防対策としていました。

菊には邪気を払う力があると言われるのもこの薬効からですが、’邪気’とは見えない恐怖の総称であると考えます。つまり邪気を払うとは無病息災と延命長寿を願うことでしょう。

老松文様-oimatsu-

[不老長寿]

古代中国では、松が生い茂る伝説の神山’蓬莱山’に住む仙人は不老不死の薬を作っているという言い伝えがありました。その薬とは松の実だったといわれます。松の実には高いアンチエイジング効果が認められており、今でも薬膳や漢方で使われています。その言い伝えから不老不死の意味が伝えられました。また松は極貧の土地でも力強く根を付けることから男性的な力強さを表しているとも言われます。

梅文様-ume-

[安産祈願・多産・子孫繁栄]

‘ひとり寒中に咲いて芳し’

寒さ厳しい冬に、他の花に先駆けて咲く梅は、気高く高貴な花として尊ばれてきました。

梅の毎は母を表と言われます。厳しい寒さを耐えて、気高く咲く梅の花の姿は、子供を産み育てる母の強さに重なります。

また、”学問に励むと梅が咲く”という中国の思想もあり、学問の向上を願って描かれた時期もありました。

唐草文様-karakusa-

[繁栄・生命力]

古来、地や壁をはうツタ草は、寒さ・乾燥・熱気の悪環境を克服して力強い生命力を発揮すると尊ばれました。
その特徴から、永遠の躍動や繁栄を表す形とされました。また「蔦」は、地上に繁殖する「草」と、空をつかさどる「鳥」を組み合わせたもので、天まで伸びて広がる活力を表しています。生命力にあふれ、永遠に広がり続ける様子は、終わりがある人生を知っているからこその憧れですね。

牡丹文様-botan-

[開運・富・長寿]

数ある花の中でも最も美しいとされ「百花の王」と呼ばれてきました。奈良時代に薬用として伝来した牡丹は、貴族の間でしかその美しい姿を見ることができませんでした。そのため富の象徴である「富貴」と呼ばれるようになりました。

また、小さなツボミから大きく花開く姿は「人生の開花」を思わせ、繊細で華やかな花びらからは「富の象徴」を感じ、その根には高い効用があり「延命長寿」の願いを託す。豊かな日常を願う気持ちが、牡丹の文様には詰まっています。

流水文様-ryuusui-

[厄難・厄除・永劫・清らか・子孫繁栄]

最も古い日本古来の文様の一つ。
水に恵まれた日本だからこそ産まれた日本オリジナルの文様です。生命の源である水が、一滴に始まり大海に注ぐ様子を、人生の流転に例えたかのような永遠に続くかたち。物事の移り変わりや、因果の繰り返し、生死の繰り返し、また未来永劫への祈りを優雅に表現したもの。そこから派生し、子孫繁栄の願いも込められています。海=産みや、物事のはじまりが絶えない=おめでたいことが続くともいわれます。

また、流れる水は濁らず常に清らかであることが苦難や災厄を流し去ることに例えられることから、吉祥文様の代表として挙げられており、とにかく人生において大切な教訓になるような文様です。

尾長鳥文様-onagadori-

[良縁]

尾長鳥文様は想像上の生き物をデザイン化したもので、実在のオナガドリとは別物です。文様の尾長鳥は、雉(キジ)、鶺鴒(セキレイ)、山鳥など、尾の長い鳥を総称した文様ですが、その中でも鶺鴒に一番近いとも言われているようです。鶺鴒は別名「恋教え鳥」とも呼ばれ、イザナミとイザナギの出会いの手助けをしました。また、古代の人は空を飛ぶ鳥を神聖視していました。鳥霊信仰と言うそうです。鳥は、神様の使いとみなされ、死者の魂を冥界へ、来世へ送るものと考えられてきました。人との縁を運ぶ鳥です。(今回は唐草文様と一緒に描きました)

藤文様-huji-

[子孫繁栄]

花が連なるその見た目から家系図のようにつながっていくことからおめでたい席で多用されてきました。

また、藤=不死を連想させる事や生命力を感じる蔦の強さから高貴な方々に好まれてきました。藤色、つまり紫は高貴な色として知られていますね。そのイメージもあって、一部の藤原氏の家紋に用いられたり、その分家が誇りを持って藤の家紋を用いたそうです。世襲制が好むイメージを兼ね備えていたので、高貴なくらいの高さを感じます。

七宝文様-sippo-

[平和、円満、子孫繁栄]

いくつかの輪を交差&連鎖させた様子から輪違い文ともいわれます。奈良時代にはあったそうで、平安時代の貴族に使用され始めた頃に、おめでたい名前として七宝と名付けられたとか。人とのつながりの中に生き隣のご縁と手を繋ぎ誰かに肩車され誰かをおんぶしてそんな助け合いでご縁を円満に保つ事で平和になりその連鎖が永遠に続いていく様が七宝繋ぎの文様。

法華経における七つの宝と、人と人とのご縁が同等に大切であるということでしょう。

この絵には円と円の重なりの中にも無数の円も詰めてみました守り守られる円です。

唐松文様-karamatsu-

[力強さ・生命力]

唐松は、日本の固有種です。植林以外は日本にしか無い松です。唐松は針葉樹のなかで唯一の落葉樹。紅葉もして、葉も落とす、四季がある松です。寒さ暑さにとても強く、根付きもいいので、荒れた土地で最初に芽を出すのは唐松だそうで、その強い生命力にあやかったのでしょうね。ほかの木々に光をさえぎられる事なく真っすぐすくすく伸びる事からも生命色を感じずには入れませんね。老松と違うのは伸び盛りの若々しさを感じられるというところでしょうか。

橘文様-tachibana-

[永遠・長寿・子宝祈願]

橘とは、今で言うみかんの様なカンキツの果物で、絶滅危惧種。橘は古来から日本に自生している固有種です。皮は生薬としても重宝され、爽やかな柑橘の香りが気の滞りを流してくれる効果がありストレスの溜め込みからくる不調を整えてくれるそうですよ。また一年中青々とした葉をつける姿から、永遠や長寿を、冬に沢山の実をつけることから多産の象徴とされました。鏡餅のてっぺんに蜜柑が飾られるのもこの意味があるからなんですよ。

引き続き、少しづつ追加していければと思っています。

少しでもご自分の着る花嫁衣裳に愛着を持ち、新しい門出の力になりますように!

 

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