金澤ならではのお嫁入道具の一つ
花嫁のれんとは
花嫁のれんの始まりは、江戸時代末期から明治時代の初期のころ。加賀藩前田家の領地(能登・加賀・越中)で始まったと言われ、加賀友禅の豪華なのれんを作り、花嫁道具として両親が娘に持たせました。
実家の紋が入れられ、両親からのお祝いの気持ちが、柄が込められ描かれています。
使用されるのは一度きり、結婚式当日の婚家の仏間の前にかけられ、仏壇をお参りするその時だけ。婚家のご先祖様に花嫁がご挨拶をするときは、花嫁の両親はその場にいることはできません。そのため、のれんに願いをかけ「どうかこの先幸せでありますように」とわが子の多幸を願ったのです。
のれんをしつらえることは、親にとっては子離れの覚悟の時間となります。
また、のれんには”生活の場”と”神聖な場”を隔てる結界の役割も果たします。婚家のご先祖様にご挨拶する清浄な仏間と、俗世界の居間を区切ったのです。
また、鮮やかな暖色の花嫁のれんとは別に、「花婿のれん」というものもあります。
点数も少ないのでなかなか見ることがなく、金沢にお住いの方でもご存じの方が少なくなった花婿のれんですが、お婿養子さんのためののれんです。
↑の写真のように紫や緑など寒色が用いられました。
こちらの花婿のれんは、実際に私の祖父のお婿入りに使用した時のもの。
もう70年ほど前のものです。
今では、上記のような目的で使用されることは少なくなりましたが、文化としてお写真撮りや入場の演出に使用されることが多くなりました。
見た目にも華やかな加賀友禅を背景に、お写真を撮るのも素敵なものです。